末っ子

母親が会計をするのを横で黙ってみている兄。といってもかなり子供だ。弟の方はさらにガキでマイペースに色んな棚に目移りしながらようやくアイスコーナーに辿り着いた。

弟は欲しいものがやっと見つかったらしく、お菓子だのアイスだのと子供達が選んだ商品の会計を済ませたレジ袋を小脇に抱えた母親に向かってワンテンポ遅れて買って欲しいアイスを走りながら持ってきた。

それ、同じのもう買ったよ、と母親は言う。

ああ、なら良かったじゃないか。と私は内心思っていたら自分が大事そうに持っていた方の商品をアイスケースに直してこちらに戻ってくる時の弟の顔は不貞腐れと半泣きの間みたいな顔をしていて嫌だ、違う。と母親に強く訴える。が、俯いている。もう殆ど泣きそうだ。

何が?同じのだよ。と母親は言いながらごねる弟を宥めるように一緒に店を出て行く。弟はもう母親に寄りかかってしまってずっと首を振っている。奴は今や何も見えちゃいない。斜めに母親に寄りかかりながら母親の脇腹目掛けて頭部をこすりつけている。おいおい、駄々のポーズにしては出来過ぎてやしないか、胎内回帰か、おい。だとしても突貫工事がすぎないか駄々っ子よ。神話みたいな無茶だよ、それ。

 

もう人目も何も関係ない。大好きなお母さんに守られながら、自分の思い通りにならなかった根源でもあるそのお母さんに駄々をこねている。もう最初から最後までお母さんの愛フルコースを味わう尽くす魂胆だったんだよ。アメもムチだし結局ママだし、ムチもアメだし、結局ママだし。そもそも甘えたの末っ子ってのはいつでもそうなんだ。心はいつも「当然の帰結、ママ」と安心しきっている。

だからなんだ。私は6人兄弟の末っ子の父と4人兄妹の末っ子の母から産まれた末っ子である。見てみろ、両親は未だにアダルトチルドレン只中で一度壮絶な喧嘩をやって父は家を出たきりだ。それから15年以上離婚もせずに互いに孤独と利己心だけを鋭利にして、とっつき難く、いつも不機嫌なろくでもない大人に成り下がった。私は、自覚している。エゴイズム。恥ずべきエゴイズム。認める。許す。自分も他人も。

臭え、ため息はごめんだ。