男と女

a. 私、ディズニーランドと同じくらいラブホテルが好きなの。

 

b.ディズニーランドは行った事ないなあ。

 

a.私は小さい頃からディズニーのビデオを幾つか見ていて、いざ物語の舞台装置が目の前に現れた時、洗脳は完成してしまったの。

 

b.園内には子供にしかキャッチできない過剰な興奮を促す電波が出てるってほんと?

a.ずっと世界で一番ってのはやっぱり悪なのよ、基本的に。並大抵じゃない策略、それも力ずくだったりする事が裏では行われてる気がする。

 

b.その点ラブホテルは庶民的でいいじゃない、こじんまりしていて。

 

a.そうよ。あんなにワクワクできて非日常感も暗さも身近で隣には行きずりの男がいるんだからね。

 

b.行きずりの男なんだ。好きな人とじゃないの、普通。

 

a.ウォルトの洗脳に勝つ為には自分を正しく見失う為の幾つかの条件が必要なの。

 

b.例えば?

 

a.だから、好きな人とってなると思い入れが少なからずあるでしょ。それじゃダメなの。もうずっと夢を見てるのよ、私。きっと蜃気楼のような人じゃないと。

 

b.僕は君のこと何とも思ってないけど、君とのセックスは好きだよ。

 

a.私もそんなとこ。

 

b.僕は男だから違う種類の生き物から認められる喜びをずっと感じてる。specialityと言っていい。しかも相手は女。僕は尊敬してるんだ女性を。

 

a.おめでたいわね。specialityなんて子供みたい。

 

b.男はずっと子供じゃないか。論理も鉄砲も権威も支配で要は力だ。単純だよ。アンビバレントな物を最初から持ってる女とは生物的にレベルが違う。

 

a.男にも相克くらいはあるでしょ。

 

b.でもフリなんだ。僕らはそれをオリジンな物か今ひとつ確信が持てない。君たちを前にするといつも。

 

a.なんだか可愛そうね、男の人って。

 

b.だから、今ここには君がいるからそれでいいなんて熱っぽい事は少しも思えないんだ。きっと明日には消えてしまっても全然理不尽とも思わない。だって君たちは天使だから。

 

a.なんだ、あなたも夢の中にいるみたいね。
早く力を見せつけなさい、世界に。そしたらあなたは決して消えたりはしないオリジナルをあなたの中に見つけられるはずだから。

 

b.それだって所詮は借り物かもしれない。

 

a.自分を信じる事が出来ないのね、あなた。どうしちゃったの。私好きよ、あなたの絵。

 

b.なんだか手詰まりなんだ

 

a.今日はしないの、もう。

 

b.僕はまるでこのひと時を後から思い出して数日の創作活動に打ち込むようなどうしようもない奴なんだ。それをふと考えてしまって気分が塞いでしまったよ。

 

a.頭の中でそうやってあれこれ悩んで落ち込んでネガティブな思考の中で揺れていても小さくまとまっちゃって先が見えてるわよ、貧乏臭いわねアート畑のくせに。

 

b.ふふふ。今のはまんま僕のミューズの台詞みたいだ。少し可笑しくなってきたな。

 

a.何に仕立て上げてもいいけど、早くこっちに来て触ってよ。もういい加減身体冷えてきちゃうからさ。